【分子機能化学】
(Structural and Functional Aspects of Organic Chemistry )
[化学科 3群 必修 科目(配当年次: 第3学年 ) ]
 
単  位:2単位 単位認定者: 長谷川真士
授業期間: 後期  15コマ 科目分担者:
授業形態: 講義  週1コマ
 
授業の目的

有機化合物が示す物性は構造と電子状態に大きく依存する他、集合状態にも左右される。有機化合物の分子や分子集合体が示す機能とは何か、またその機能はどのようなメカニズムで発現するかについて、分子を基本単位として考察する考え方を習得させる。

教育内容

フェニキア人の貝紫から、フォトリソグラフィー用の色素、スマートフォンに利用される導電性材料に至るまで、革新的な有機材料は人類の生活史に劇的な変化を及ぼしてきた。講義では有機物質が示す様々な物理現象を、分子構造や電子構造と外部刺激との相関という観点から捉えて理解し、有機材料について有史以来から近代に至るまでの代表的なの材料を紹介すると共に、現在の最新のトピックスを分子論的に解説する。講義内容は、序論として有機化学の様々な物理現象(光特性、酸化還元など)を学んだ後、古典的色素、機能性色素、導電性有機材料、有機半導体、超分子化学、ナノ構造の開発の順に紹介を予定している。

教育方法

資料を配付し、それにそって解説しながら進める。最新のトピックスは適宜論文を引用したスライド等を用いる。

 
講義内容(シラバス)
項  目 担当者 授業内容

1回

序論 (分子機能化学の概説)

長谷川

分子および分子集合体の機能、最新のトピックス

2回

物性有機化学の基礎1(光とエネルギー)

長谷川

有機化合物における蛍光、リン光とその材料および有機化合物の酸化還元の基礎について紹介する。

3回

物性有機化学の基礎2(酸化還元)

長谷川

HOMOおよびLUMOのエネルギー準位と構造相関について理解を深める。有機化合物からなるドナー、アクセプターを紹介し、電荷移動錯体のメカニズムならびにそれらが示す現象についての理解を深める。

4回

色素の有機化学 1(色素と分子構造)

長谷川

色素における発色の仕組みを学ぶ。電子構造と色調について紹介し、いわゆる"古典的な"色素における分子設計について学ぶ。

5回

色素の有機化学 2(人類の歴史と古典的な色素)

長谷川

有史以来の人類と色素のかかわり合いを紹介し、現代の化学工業に至るまでを紹介する。発色団としての代表的な分子骨格と用途(例えば、服飾、食品、インクなど)を紹介する。

6回

機能性色素 1(フォトクロミック材料)

長谷川

エネルギー受容体としての"色素"を理解し、様々なクロミック材料への理解を深める。

7回

機能性色素 2(フォトレジスト、色素増感太陽電池、EL材料)

長谷川

ディスプレイ用の色素から、リソグラフィー技術に利用されているフォトレジスト用色素などを学ぶ。ムーアの法則等の現代社会で解決すべき問題を紹介し、求められる高機能色素について解説する。

8回

導電性有機材料1(有機化学物の電気伝導メカニズム)

長谷川

電気伝導を電子の動きとして紹介し、有機分子内の伝導挙動について紹介する。分子性導体の電子構造やメカニズムについて学ぶ。

9回

導電性有機材料2(バンド構造、導電性高分子)

長谷川

分子性導体や導電性高分子における伝導メカニズムについて、バンド構造を理解しながら紹介する。p型、n型の概念に関する理解を深め、分子構造との関連を紹介する。

10回

導電性有機材料3(有機電界効果トランジスター)

長谷川

有機電界効果トランジスター(FET)に関して動作機構を紹介する。また、有機化合物を用いた電子デバイスの作製方法について学ぶ。現代で活躍する化学メーカーと半導体市場の関連についても紹介する。

11回

超分子化学1(相互作用とエントロピー 〜分子間相互作用と集合現象)

長谷川

分子間に働く非共有結合の種類と強さについて学ぶ。超分子化学における「相互作用」と「相補性」の相乗効果を理解し、熱力学的パラメータとの相関を学ぶ。

12回

超分子化学2(分子認識と自己集合 〜クラウンエ−テルとインターロック化合物)

長谷川

クラウンエーテルやカテナン、ロタキサンについて紹介する。化学構造および酸塩基の効果(HSAB則)と相互作用の強弱について理解を深める。

13回

超分子化学3(自己集合によるナノ構造の構築)

長谷川

相補的水素結合からなるナノ構造とその機能性に関する最新のトピックスを紹介する。

14回

超分子化学とナノテクノロジー(散逸構造と自己組織化 〜非平衡系への挑戦)

長谷川

プリゴジンが提唱した散逸構造論における自己組織化(Self-organization)と、超分子化学における自己集合(Self-assembly)についての違いを学び、超分子化学から期待される技術について学ぶ。

15回

まとめ

長谷川

全体の確認と復習。スライドを用いて復習する。

 
到達目標

次年度の卒業研究に向けて,観測される実験事実を分子論的に考察できるような力を身につけることを目的とする。講義を通じて得た知識をもとに「考えて仮説を立てる」ことが出来ることを到達目標とする。

評価基準

期末試験により評価する(100%)。出席状況に応じて減点する。適宜、練習問題等を配付し、授業内解答を行い提出を求め評価を行う。

準備学習
(予習・復習)

【予習】配布された資料を読み、図書館等で関連する事象に関して調べ、内容の理解に努めること。【復習】適宜まとめノート等を作成し内容の整理,把握に努めて分子論によるイメージをつかむこと。適宜、質問可能であるが、必要に応じて参考書を閲覧し理解不足な点を補うこと。

その他

講義内容を理解しながら改めて「清書ノート」を作製することを強く薦める。理解不足な点は適宜質問すること。化学と現代の生活(経済活動)は密接に関係しており、将来、いかなる分野に進んでも材料に関して広く世の中のトピックスにアンテナを張っておくことが重要である。

 
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教科書 資料を配付する
参考書 マテリアルサイエンス有機化学 伊与田正彦、横山泰、西長亨 東京化学同人 2,400円(税別)