【量子化学】
(Quantum Chemistry)
[物理学科 3群 B選択 科目(配当年次: 第3学年 ) ]
[化学科 3群 必修 科目(配当年次: 第2学年 ) ]
 
単  位:2単位 単位認定者: 松沢英世
授業期間: 後期  15コマ 科目分担者:
授業形態: 講義  週1コマ
 
授業の目的

自然科学分野の中で、多様な物質の性質を理解するための基本原理を説明しようとする学問が「量子化学」である。量子化学は「原子と分子の性質」を、ミクロな世界を記述する量子力学によって理解する。本講義では、古典的な化学結合論では説明できない現象が、量子化学によってどのようにして説明できるのかについて学び、今日的な化学結合論の基礎を習得する。

教育内容

前半は、原子の電子構造を理解するための量子力学を学ぶ。水素原子のシュレディンガー方程式と多電子原子の項状態の理解が大きなテーマとなる。後半は、近似的手法である変分法と分子軌道理論について学び、二原子分子の分子軌道とその特性について理解する。最後に分子軌道法の応用としての、π電子系の分子軌道計算(ヒュッケル分子軌道法)について概説する。

教育方法

基本的に教科書に沿った板書による講義を行うが、映像を用いた補足説明やレポート課題の解答解説の際、パワーポイントを用いた講義も行う。

 
講義内容(シラバス)
項  目 担当者 授業内容

1回

授業概要説明
導入 (古典論から量子論へ)

松沢

この授業で行う内容を概説する。
原子価の規則と化学結合の古典理論、有効核電荷と遮蔽の規則について学ぶ。

2回

量子論の基礎 (1)
ボーアの原子模型

松沢

物質波(ド・ブロイ波)の考え方と粒子と波の二重性、ボーアの原子模型と角運動量の量子化について理解する。

3回

量子論の基礎 (2)
水素原子のスペクトル

松沢

原子単位について理解し、水素原子のエネルギーとスペクトル線が非常に簡潔に記述できることを学ぶ。

4回

シュレディンガーの波動方程式 (1)
演算子と固有値問題

松沢

シュレディンガーの波動方程式を導出し、同時に導かれる演算子と固有値問題、演算子と交換関係、不確定性原理について理解する。

5回

シュレディンガーの波動方程式 (2)
一次元のシュレディンガー方程式とその応用

松沢

一次元のシュレディンガー方程式と波動関数の性質について学び、二次元、三次元のシュレディンガー方程式の固有値問題へ拡張する。

6回

水素原子のシュレディンガー方程式 (1)
動径関数とその性質

松沢

水素原子のシュレディンガー方程式の解(極座標、量子数、動径部分と動径節、動径分布関数)について学ぶ。

7回

水素原子のシュレディンガー方程式 (2)
角関数とその性質

松沢

水素原子のシュレディンガー方程式の解(角部分と軌道角運動量)について学ぶ。

8回

多電子原子の項状態とエネルギー (1)
ラッセルーソンダース結合

松沢

パウリの原理とスピン量子数、多電子原子の項状態(ラッセルーソンダーズ結合とフントの規則)について学び、角運動量がエネルギーを決める重要な因子であることを認識する。

9回

多電子原子の項状態とエネルギー (2)
原子スペクトル

松沢

ナトリウムのD線と電気双極子遷移の選択則について学び、角運動量による表記と選択則が実測を正しく説明できることを理解する。

10回

変分の原理と近似計算

松沢

変分の原理について学び、変分法が正しく作用することを、水素原子の軌道関数を例として確認する。

11回

分子軌道理論とLCAO近似

松沢

水素分子の分子軌道をLCAO近似と変分法によって導出する。

12回

二原子分子の分子軌道 (1)
水素分子の形成

松沢

水素分子の分子軌道の拡張として、二原子分子の分子軌道の形成について理解する。結合性軌道と反結合性軌道、結合次数という重要な用語を理解する。

13回

二原子分子の分子軌道 (2)
窒素分子と酸素分子の分子軌道

松沢

分子軌道理論によって初めて説明が可能となる、「酸素分子の常磁性」につぃて、反結合性軌道の役割の理解とともに学ぶ。

14回

π電子系の分子軌道法(ヒュッケル分子軌道法)の概説

松沢

分子軌道法の応用として、π電子系の分子軌道法(ヒュッケル近似)を簡単に概説する。

15回

まとめ

松沢

全体の確認と復習。

 
到達目標

多様な物質の性質を理解するための基本原理となる「原子と分子の性質」を量子力学を基礎として学ぶ。今日的な化学結合論を量子化学の言葉で理解し、分子の性質を分子軌道理論によって考察するための基礎を身につける。学生諸君がとるべき具体的な達成目標は、レポート課題の問題の意図(背景)を十分理解した上で、個々の問題を自力で解けるようにすることである。

評価基準

定期試験はレポート課題をベースとした問題を出題する。合格点をとるには上記の到達目標を60~70%以上達成する必要がある。評価は定期試験とレポートの総合評価とする。なお、欠席とレポート未提出は減点する。

準備学習
(予習・復習)

学習内容の理解を確実なものにするため、ほぼ毎回、レポート課題を出すので、可能な限り自力で解いてみること。翌週、解答のプリントを配布して解説を行う。

その他

量子理論の基本的理解と描像の把握には、原子単位、演算子の交換関係、固有値方程式などをはじめとする、量子力学で登場する数学に慣れ親しむことがとても重要である。教科書はオリジナルに書き下ろしたもので、数式の誘導をできるだけ詳細に記載してあるので、講義の内容に沿って式を追い、授業の復習とレポート課題を解くのに大いに活用して欲しい。

 
  (書  名) (著者名) (出版社名) (定価)
教科書 量子化学Ⅰ(量子理論と原子・分子の電子構造)2016年度版 松沢英世 予価 2,800 円
参考書 アトキンス 物理化学(上)10版(8版でも可) P. W. Atkins, J. de Paula(中野 他 訳) 東京化学同人 5,700 円+税